昨日の午後は、ウブド在住のAさんが来て裏庭の東屋で将棋を指していた。
電話が鳴って、女中が受話器を取ったようだった。しばらくすると、女中が切羽詰った声で私を呼んだ。警察からの電話で、妻が事故にあったという。
電話を換わると、ポルダー(州警察)の何とかという男が出て、
『お宅の奥さんと子供が事故に遭った。プルタミナ石油公社のタンクローリーとぶつかって、奥さんは頭蓋骨骨折で意識不明、息子さんも頭に怪我、左腕も骨折。』
当然のことながら、私は唖然としてしばし絶句した。
ポルダーの男の話が続く。
『奥さんの名前は、○○。息子さんの名前は、△△。乗っていた車は、××ですね。』
話が非常に具体的なので、私はいちいちうなずく。
『奥さんと息子さんは、サンラ国立病院1階の救急治療室に運ばれた。今から担当医の携帯番号を言うから、控えてそちらに電話してくれ。』
急いで件の番号に電話すると、医者だと証する男が出て、私の問いに応じて怪我の状態を話した。緊急の手術が必要だといったことも言ってきたようだった。
妻と息子はピアノ教室に通う日だった。二人の面影が脳裏に浮かぶ。もう一緒にテニスもできなくなるかもしれない。(しかし、乗っていった車は、エアバッグ搭載車だ。タンクローリーとぶつかったからといって、頭が割れるだろうか?)かすかな疑問が浮いてくる。
私は医者に言った。
「とにかくすぐにそちらに行く。最善を尽くしてくれ。」
医者は言った。
『ちょっと待ってくれ、こちらに来る前に手術のためのお金が必要だ、用意はできるか。』
このあたりからなんだか話がわかりづらくなってきたので、電話を女中に代わってもらって、私はもう一台の車のキーを探しに寝室に行った。キーが見つからない。(実は妻が持って行ってしまっていた。)
電話のところに戻って、女中がしゃべっているのをそばで聞いていると、『銀行はどこか』とか『ATMがどうのこうの』という話になっているようだった。
私は、一人でつくねんと東屋に座っていたAさんを手招きした。Aさんが来たので、妻の携帯番号を示し、Aさんの携帯から電話をかけてもらった。すぐにつながって、のんびりしたピアノの音が聞こえてきた。「今どこにいるんだ!」それでも私の声は、とんでもない怒鳴り声だったようだ。
まだ話を続けていた女中の受話器をひったくるようにして、私は医者に怒鳴った。
「コノャロー、貴様何者だ!(これだけ日本語)よくも嘘をつきやがったな。お前の名前は何だ!」
相手は突然の変化にびっくりしたらしい。10秒間ぐらいもぐもぐ言っていたが、電話を切った。
夕方になって、妻と息子が無事に帰ってきた。思わず二人を抱きしめた。
女中の話。最初に電話に出たとき、警察からだと称する男に私の妻と息子の名前を聞かれた。彼女はそれに応えたあと、なぜそんなことを聞くのかと相手に尋ねた。相手は、『事故があった。乗っていった車は何か』とさらに尋ねた。このような情報を手に入れた後で、私に電話を換わるように促した。
私とのやり取りの間に、妻の携帯の番号を聞きだした。私はやはり動転していたのだろう、女中に代わってもらって番号を言わせた。(私は番号など覚えていない)
私が医者と称する男と話している間に、別の男(ニセ警察官)が妻の携帯に電話し、『覚せい剤の取調べがあって、あなたには関係がないのだが、30分ほど携帯の電源を切っておいてくれ』と言ったそうだ。妻は話を聞き流し、電源は切らなかった。その後ニセ警察官は、立て続けに5回、妻の携帯に電話をかけてきたそうだ。
Aさんに電話をかけてもらったとき、妻の携帯が話中だったりしたらもう少し事態はまずくなっていた可能性もあった。
その後2局将棋を指し、Aさんが帰った後で、領事館の警察担当Bさんに電話をして、事態のあらましを知らせた。Bさんの話によると、この手の電話は最近非常に増えているという。東南アジア全域に広がってもいるそうだ。まったく日本人もいやな手口を考え出したものだよね。私が子供のころは、詐欺師も体を張っていたものだが。いわく、「体当たり詐欺」。
近況。1週間ほど前、久しぶりにコブラを殺した。体長90センチぐらいの中物だった。マンゴの木に絡み付いているのを息子が見つけ、私がスコップで叩き落して、退治した。スコップに胴体を押さえつけられたコブラは、「シュー、シュー」と粟立つような声を出していた。次回はあわてずデジカメに収めようと思っている。
4月、BIWA(バリ・インターナショナル・ウーメンズ・アソシエイション)のチャリティー・テニス大会があって、私はシニア〈50歳以上〉のダブルスとミックスダブルスを制した。妻もダブルスで優勝。
ところで、私はシャンプーをするとき、ストレスを感じる。現在使っているシャンプー容器の穴が5ミリぐらいの大きさで、十分に注意しないと溶液がドバッ出てきてしまうからだ。
中学1年生のころ、朝日新聞の天声人語に、ある化粧品会社のことが載っていた。
〈社長が、シャンプーの売り上げを伸ばすためのアイデアを社内募集したところ、容器の穴の直径をを2倍にすればよい、という提案があった。発想が奇抜で、すばらしい。〉と言った内容だったと思う。私がいまだにこの記事のことを覚えているのは、その内容に感心しながらも多少の違和感を覚えたせいだろうと思う。その提案をした人が現在も存命かどうかは知らないが、罪なことを考えたものである。彼(彼女)の提案を取り上げた会社は大きく業績を伸ばしただろうが、それに比例して、確実に環境も悪化させたことは間違いないだろう。
インドネシアのシャンプー会社が、日本のまねをして容器の穴を大きくしたのかどうか知るすべもないが、このような環境を破壊する営業施策は、規制すべきであると思う。
〈シャンプー等容器の穴は、2.5ミリ以下でなければならない。〉という簡単な条文と罰則規定を設ければよい。まあ、社民党ぐらいが議員立法でやればよい仕事だろう。
(2008年5月6日 By TORU)
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